パリッと弾ける皮、あふれ出す肉汁。
昭和49年、香川県丸亀市北平山町にて創業し、丸亀で長く親しまれたお店が骨付鳥の「藤ちゃん」です。

その味には、レシピには書けない「魔力」がありました。
「骨付鳥」の黎明期の味を守り続け、50年にわたり長く親しまれてきた名店でしたが、2024年8月に惜しまれながら閉店に。
「あの味はもう二度と味わえないのか……」と嘆かれるなか、その味が気鋭の新店「おやわか」として高松に蘇ったのです。

本記事では、「藤ちゃん」が四国化成グループのシコク・フーズ商事の運営する「おやわか」として蘇ったいきさつについて対談形式で紹介します。
「おやわか」が『藤ちゃん』の味を継承することになったいきさつとは?
――「おやわか」が、『藤ちゃん』の味を継承することになったいきさつを教えてください。
大空:
四国化成グループのシコク・フーズ商事が運営する「おやわか」は、2023年にキッチンカーでの骨付鳥販売からスタートしています。

大空浩基 さん
シコク・フーズ商事 フードサービス課
「地元の味を守り、広めていきたい」
その事業の立ち上げの際に、地元・丸亀の人気店『藤ちゃん』に味の監修をお願いすることになりました。
丸亀近辺で勤務する四国化成の社員が『藤ちゃん』の常連客であったことも決め手です。ぜひともお願いしたいと伺いましたが、最初は頭を縦に振ってもらえませんでした。
藤ちゃん:
実は、こういう話はこれまでにもあったけど、全部断っていました。弟子入りしたいという話もです。

藤 純治 さん
『藤ちゃん』店主
「自分の夢を託すことができた」
だけど何回もお願いされる中で、「この人たちだったら信頼できるだろう」と思うようになり、引き受けることにしました。
大空:
その頃、自分たちだけで骨付鳥を焼いてみたのですが、真っ黒に焦げてうまくいきませんでした。
藤ちゃんが引き受けてくれなければ、今このように店舗を出すことはできなかったと思います。
藤ちゃん:
あの時、皆さんにお願いしたんですよ。「どうせやるならいずれは店を出すつもりでやってください」と。
それもチェーン展開できるくらいの店にしてと。3年経って、その約束を実現してくれた。それがうれしい。
中野:
その後、シコク・フーズ商事に入社した私が藤ちゃんから味を伝授してもらうことになりました。

中野 初音 さん
シコク・フーズ商事 商事部
小さい頃から『藤ちゃん』ファンで運命的にその思い出の味を引き継ぐことになった
実は、私は幼い頃から家族で『藤ちゃん』に通っていて、骨付鳥は藤ちゃんの味しか食べてこなかったんです。今思えば、英才教育を受けていたようなものですね。
大人になって、まさか自分が味を教わる立場になるとは思ってもいませんでした。
会社で「誰に教えてもらうんですか」と聞いたら、「藤ちゃんです」と言われて。本当に縁を感じました。
実際にお店へ行くと、藤ちゃんが「お前か!」と迎えてくれて。それもすごく嬉しかったですね。
藤ちゃん:
子供の頃の、可愛らしい姿をよく覚えていますよ。
『藤ちゃん』のおいしさのポイントとは?
――『藤ちゃん』のおいしさのポイントはどこでしょうか?
藤ちゃん:
塩とガーリックとコショウだけ。はい、もう簡単です。
大空:
藤ちゃんは簡単とおっしゃいますが、シンプルなものほど難しいです。おいしく焼けるようになるには3カ月ほどかかりました。

その間、肉の切り方や味付けの仕方などは丁寧に教えてもらいましたが、細かい部分は見て覚えるしかなかったです。
皮をパリッと焼き上げるのもコツがありまして。
藤ちゃん:
そこは鶏油(チーユ)をうまく使って。
大空:
肉全体に味を回すのも、最初に想定していた方法とは違いました。そこも鶏油が関わっていますが、これ以上は言えません(笑)。
藤ちゃん:
やっぱり50年近い経験の中で工夫して、これはこうかなというのがある。
大空:
最終的には藤ちゃんから「よっしゃ」の言葉をいただいて、キッチンカーで販売することができました。

キッチンカーで走っていると車に表記していた『藤ちゃん』の名前を見て、追いかけてくださる方がいました。
SNSの情報を見て、イベントに来てくださる方もたくさんいる。あらためて地元に根付くファンの多さに驚きました。
(編集部注)まずは2024年にキッチンカーを中心としたテイクアウトで「おやわか」がスタートし、2026年にレストラン実店舗として「おやわか高松店」がオープンとなりました。
『藤ちゃん』流の心得とは?
――店づくりに関して、『藤ちゃん』流の心得はありますか?
藤ちゃん:
技術いうもんは大したことないんです。
大切なのは店の雰囲気とかムード作り。これが肝心。店の中ではとにかくお客さんと会話していました。

大空:
『藤ちゃん』では、藤ちゃんと、料理担当の母ちゃんと、パートのあっこちゃんの3人が、絶妙な役割分担で回っていたんですよね。
藤ちゃん:
そう。3人のチームワーク。「漫才みたいや」言われてたけどな(笑)。
やっぱり商売は相手の目を見て話して、それから物を売る。「今日は婆ちゃん元気か」とか「お、里帰りしたんか」とか。会話が一番大事やな。
中野:
そういう家族的なやり取りがあるから、「藤ちゃんのところへ行こう」と思うんですよね。
藤ちゃん:
店で和んでくれると売上も上がる。そうやって50年店を続けてきたな。
高松店の店作りに込められた思い
――高松店の店作りにどのような思いを込められましたか?

坪内:
店舗の立ち上げの時に、スタッフ全員で一つのミッションを掲げました。「日本一の骨付鳥店になる」ということです。

坪内 達夫 さん
シコク・フーズ商事 フードサービス部
日本一の骨付鳥店を目指して高松店を作り上げた
そのために何ができるかを考えた時、やはり藤ちゃんが大切にしてきた会話にたどり着きました。
大空:
坪内さんは、接客の仕組みを工夫していますよね。
坪内:
はい。まずはお客様に「当店は初めてですか?」とお聞きして、そこから「どちらから来られたんですか?」と会話を広げていきます。
機械的ではない、ホッとするような接客を心がけています。また、かつての藤ちゃんの店のように、元気な挨拶も徹底しています。
藤ちゃん:
修業時代の先輩に、どんなお客さんが来ても大きな声で「いらっしゃい!」と言う人がいてな。
それを習って、「いらっしゃい」と「ありがとうございました」は元気な声で言うようになったな。
坪内:
その元気と会話の伝統は、しっかり引き継いでいます。また、この高松店は20代から50代の女性をメインターゲットにしています。

内装やメニューも、女性が一人でも気軽に来やすい、楽しんでもらえる雰囲気を意識して作りました。
これからの展望と「おやわか」に期待すること
――スタッフの3人はこれからの展望を、藤ちゃんは「おやわか」に期待することを教えてください。
坪内:
「日本一」のミッションを達成するために、藤ちゃんの味をベースに、最高の会話とサービスを磨き続けます。
お客様に「ここは日本一の骨付鳥の店だ」と言ってもらえる店にしたいです。
大空:
ここはオフィス街なので平日はランチの需要がありますし、土日は観光客の方も多い。

場所や地域に合わせて、柔軟にお客さんに喜ばれるものを提供していきたいですね。それが店を増やしていくことにつながると思っています。
中野:
子供の頃から慣れ親しんだ藤ちゃんの味をずっと守りつつ、時代に合わせて求められるニーズにも応えていきたい。
この「おいしい」をもっと大きく、広げていきたいです。
藤ちゃん:
これからは、藤ちゃんの味ではなくて「おやわか」の味を期待されるようになってください。
長年使ってきた『藤ちゃん』の暖簾を店内に飾ってくれている。弟子は取らなかったけど、「おやわか」に自分の夢を託すことができました。

プレッシャーに感じる必要はないけれど、最初に交わした「チェーン店にする」という目標にも期待しています。
- 「おやわか高松店」紹介ページ
- テイクアウト専門店「おやわか厨房」紹介ページ
- 「おやわか高松店」公式サイト
- 四国化成関連会社「シコク・フーズ商事株式会社」
- 四国化成ホールディングス株式会社












