本記事では『月刊マルータ』で連載していた、尽誠学園高等学校に関するコラムをまとめています。
新しい魅力を知ったり、豆知識が増えることで、さらに尽誠学園を身近に感じられるようになるはずです!
【連載コラム】

下山 優氏
尽誠学園高等学校 校長
大阪府出身、推薦で尽誠学園に入学。平成5年野球部キャプテンを務める。和歌山大学卒業後、2000年尽誠学園で教員兼野球部のコーチに就任、2004年筑波大学大学院入学。2006年 野球部監督就任、2024年校長就任
コラム1:先生たちが今の子どもたちに感じている「違和感」とは

認知機能を向上させる
尽誠学園は、令和8年4月から包括的認知機能トレーニング「コグトレ」を取り入れます。
コグトレとは、「学習や生活の土台となる認知機能」を強化するためのトレーニングです。
具体的に一例を挙げると、図形の数を数える、家族の年齢差から全員の年齢を導き出す、といったパズルやゲームのような「頭の中で情報を操作する訓練」です。

対象となるのは全生徒、4月から毎日10分間設けられている「朝の読書時間」のうち、週に2回コグトレの時間に充てることになりました。
その目的は「認知機能」を向上させるため。
言い換えれば、頭の中で覚える・写す・見つける・想像するといった、知識を習得する前の「学びを受け取る力」です。
尽誠学園はなぜこの取り組みを行うことになったのでしょうか。
今までにないケース
コグトレを導入した理由。それは、現場の先生たちがここ数年感じている生徒たちの「違和感」にありました。
例えば、「たった今言ったばかりのことを、手を挙げて質問する」など。
見るからに話を聞いていないのなら当たり前ですが、明らかに一生懸命聞いている生徒がそうなる。
これを言い換えれば「聞いても頭に入っていない」ということです。先生たちは、「それは今までにないケース」といいます。
また身体的な面でも、「こうするんだよ」とお手本を見せられても、その通りに自分の体を動かすことができない生徒が増えたといいます。
これらが日常あらゆる場面で起こっているとなると、違和感どころか「正体不明な何か」に不安を覚えます。
最初は、コロナ禍での休校で「集団生活が送れなかった影響」や「人の気持ちを理解する機会がなかったせい」と先生たちは考えていました。
しかし徐々に「どうもそれだけではないな」と感じるようになったといいます。
違和感の正体は?
その頃尽誠学園は、ひょんなことから「コグトレ」を発案された宮口幸治先生のお兄さんと繋がりがあることがわかりました。
その方は高知健康科学大学学長の宮口英樹先生で、ある教員の知り合い、さらに研究室に所属していた卒業生もいました。
それをきっかけに宮口先生の知見に触れたことで、尽誠学園では「子どもたちの違和感の正体は、認知機能が十分に育っていないことではないか」という結論に至りました。
そこで、尽誠学園の強みである「良いことは即行動」で、コグトレを取り入れることに決まったのです。
AI時代の人間として
現代はスマホやAIなどのツールが溢れています。
便利になった反面、情報を自分で覚えたり頭の中で深く想像したりする機会が減っていることは否めません。
そこでコグトレを行うことで、日常で使わなくなりがちな脳の機能を再活性化させることができるということです。
つまり尽誠学園の取り組みは、「困っている子を救う」ためだけのものではなく、「AI時代に人間として備わっておくべき基礎能力」を磨き、個々の能力を最大化させるためのコンディショニングとしての側面を持っています。
下山校長より
テクノロジーの急激な進化により、社会が大きく変化する今、確かな学びの土台となる「認知機能」を育むことが不可欠です。本校では、宮口先生の知見を得ながら4月より全校でコグトレを導入し、情報の「受け取り、整理し、活用する」力を鍛え、現代社会が求める人材育成に努めます。
宮口英樹先生より
下山校長先生は、大学院で運動のコーチングを研究された経験もあり、
コグトレの目的である「問題解決力は自ら思考し身につけるもの」という考え方に、直ぐに共感していただきました。尽誠学園高校とは2月に連携協定を締結し、4月から段階的に認知機能向上に向けて共に取り組んでいきます。
コラム2:反響を呼んだ「先生たちの違和感」

尽誠学園が挑む新たな取り組み
4月号で紹介したこの話題は、読者の皆様から大きな反響をいただきました。「興味がある」「もっと知りたい」といった切実な声が届いています。そこでコグトレについて、もう少し詳しくお伝えします。
コグトレとは
改めてコグトレとは、「ケーキの切れない非行少年たち」の著者で、児童精神科医の宮口幸治先生が考案した「包括的支援プログラム」です。もともとは少年院で、簡単な図形が写せない、短い文章が復唱できないといった少年たちの支援から始まりました。
なぜコグトレが必要なのか
学習には「注意・記憶・言語理解・知覚・推理・判断」といった認知機能が土台になります。特に現代はデジタルツールの普及により、情報を覚えて深く想像することが減り、脳の機能が退化しやすい環境にあります。
例えば、授業で先生の話を集中して聞くのも「注意」の力が必要です。漢字を覚えるにも「記憶」が欠かせません。
つまり認知機能を鍛えることが「学力向上への基礎」となるといえます。成績優秀な生徒であっても、「これをやればどうなるか」という予測力や感情のコントロールに課題を抱えるケースもあります。AI時代だからこそ、誰にとっても認知機能を鍛えることは不可欠なのではないでしょうか。
成果に期待
尽誠学園では全校導入に先立ち、昨年9月から衛生看護科で先行してコグトレを実施してきました。週2回、朝のわずかな時間ですが、半年が経過した現在、現場の先生方からは「少しずつ成果が見え始めている」という声が上がっています。
次号では、実際に行われているトレーニングの内容や、脳が強化される具体的なイメージについてお伝えします。
コラム3:尽誠学園の新たな取り組み「コグトレ」その具体的な内容とは

注意力をつけるトレーニング 〜聞く力をつけよう〜
- 出題者が文章を読みます
- 回答者は最初の言葉を覚えて書き出します
例:最初とポン❶ 動物の名前が出たら手を叩きます
小さな池でクマが水浴びをしています
池の向こう側でウサギが眠っています
黄色いインコが飛んできました
このトレーニングの狙い
聞く力には、音の違いの聞き分け、聞いた言葉や文章の復唱、覚える・理解する、などがあります。
例えば授業だと、どんどん流れていく先生の言葉を聞き取っては覚える力が必要です。
これには「聴覚ワーキングメモリ」といった機能を使います。
この機能が弱いと、聞き逃しが多かったり集中力が持続しなかったりします。
この「最初とポン」では、1つの情報を覚えておきながら次の文章を聞き取ることで聴覚ワーキングメモリをトレーニングします。
こういった練習をすることで、授業中の先生の話や人の話を注意・集中してしっかり聞く力をつけて聞き逃しを減らしていきます。
このトレーニングをコツコツと実施することで、「たった今言ったばかりのことを質問する」生徒の「聞く力」を底上げしていくということですね。
いろいろなコグトレ
「注意力をつけるトレーニング」を例として挙げましたが、コグトレには様々なトレーニングが組み込まれています。「感情をうまくコントロールできる」「危険なことを察知する」「人との接し方を学べる」「問題をうまく解決できる」「身体をうまく使う」など。
これらは、コミュニケーション力の乏しさや対人関係が苦手、融通の効かなさ、想像力が乏しい、相手の気持ちがわからない、衝動的でキレやすいなどの、「現代の子どもたちの困りごとになりがちな問題」を網羅しています。
コグトレの目的は
保護者が学校に求めるものって何でしょうか。おそらくほとんどの親御さんは『ただ勉強ができればそれで良い』とは思っていないと思います。友だちと仲良くして、部活も頑張ってほしい。それができる子なら、将来もきっと立派な大人になれるはずですから。
尽誠学園が「コグトレ」を導入した目的を、下山校長先生にお伺いしました。
「本校では、生徒たちが変化の激しい時代を生き抜くための土台作りとして『コグトレ』を導入いたしました。デジタル化が急加速する現代、私たちは指先一つで瞬時に答えを得られるようになりました。しかしその反面、自分の頭で粘り強く記憶し、じっくりと深く考える機会が失われつつあることを危惧しています。学ぶことの原点は、情報をただ受け取ることではなく、自らの脳を動かし、咀嚼して理解することにあります。このトレーニングを通して「脳の体力」を鍛えることは、集中力や整理する力を高め、普段の授業に対する理解度を深めることにも直結します。安易な近道に頼らず、思考の根っこを力強く伸ばす経験こそが、将来どのような壁に突き当たっても自力で道を切り拓いていく『生きる力』を育むと確信しています」。
コラム4:近日中に公開します
近日公開











