2024.04.17 コラム 谷頭和希のマルータエリア商業見聞録〜第3回

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こんにちは。全国のチェーンストアについて、ビジネスサイトなどでコラムを執筆しているライターの谷頭和希です。マルータエリアのうどん屋では飯山の「なかむら」が一番好きです。土日に行くとびっくりするほど行列ができていますよね……。

前回は、「宇多津ビブレ」と「イオンタウン宇多津」について、それを「形」の面から眺めつつ、商圏の変化がそこに現れていることを確認しました。今回は、実際にイオンタウン宇多津の中に入ってみましょう。

注目の「サイゼリヤ」

イオンタウン宇多津は、スーパーマーケットの「マルナカ」を核テナントとして、いくつかのお店が集合しています。中でも注目度が高いのが、イタリアンレストランチェーンの「サイゼリヤ」ではないでしょうか。

サイゼリヤは1973年、千葉県市川市に一号店を開店して以来、全国に出店を広げてきました。しかし、四国地方への出店は遅く、香川県では2022年「イオンモール綾川」への出店が初めて。そして、2023年4月にここ、イオンタウン宇多津に香川県2号店が誕生しました。ちなみに3号店目は「イオンモール高松」内に、4号店は高松の丸亀町商店街の中にある「丸亀町グリーン」に出来ました。マルータエリアでは唯一のサイゼリヤ店舗になるんですね。

ちょっと静かなサイゼリヤ?

サイゼリヤは、定期的にSNSなどでバズることでもお馴染みです。それぞれの料理が安く、若年層を中心として多くの人が訪れるため、いろんなネタになりやすいわけです。有名なところでいえば、お子さまメニューに書かれている間違い探しが難しい、といった小ネタなどがあるでしょう。そのため、少なくともSNS上を見ている限りでは、大人気のお店なんだなあ、とも思います。だから、マルータエリアへの出店も人気が出るはずだ、とも。

しかし、実際にイオンタウン宇多津の中のサイゼリヤに訪れてみると、あれ、ちょっとだけ静かな感じがある? 私は高松にある「丸亀町グリーン」のサイゼリヤも訪れたのですが、そこは大行列。長い待ち時間が出来ていました。私のもう一つの住まいである東京でも、サイゼリヤはいつもかなり混んでいます。特に繁華街のお店になると、とてつもない待ち時間になることも。

それに比べると、宇多津のサイゼリヤは、わりあい、待たずに入れる気もします。

これはなぜでしょうか?

「うどんの壁」問題

そもそも、都心部にあるサイゼ需要を支えているのは、若年層の利用に加えて、「ファミ飲み」といわれる、「ファミレスでのちょい飲み」需要。少し前の記事になりますが、「四季報オンライン」で、サイゼリヤは「ファミ飲みのメッカ」という称号(?)も与えられています(https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/43804)。

しかし、宇多津店のように、ロードサイドの店舗でのアルコール需要は、当然のこと都心部ほどは見込めません。すると、必然的に夜の需要よりもランチ需要が重要になってくるわけです。

でも、マルータエリアでは、そのランチ需要に立ちはだかる敵がある。

言わずもがな「うどん」です。

安いランチを食べる、といったときに、香川県の場合、圧倒的に立ちはだかるのが、「うどん」の壁。大手全国チェーンであっても、この壁が立ちはだかるのではないか。

次回は、この「うどんの壁」問題を見てみましょう。

この記事を書いた人

谷頭和希
ライター・批評家。1997年生まれ。チェーンストアやテーマパークなど、一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)など。