月刊マルータ100号の記録「創刊100号 今だから言える 三回ほど本気で 潰れかけた話」

2021年11月8日。月刊マルータ制作ラストスパートの月曜日に車内で私は倒れました。脳出血です。その顛末を改めてここに記しておきます。月刊マルータ2025年2月号の100号記念巻頭企画に掲載した記事の再掲です。

突然メールが打てなくなった

突然メールが打てなくなった。何回打ってもヘンな文章、そこでおかしいと気づいた。それが11時50分。車にいる間しんどくて眠かったが、頭痛はなかった。病院に着いた頃には意識が朦朧としていた。

その後何もわからないまま乗せられた救急車の中で、突然の頭痛。あまりの痛みに声が出る。次に右足に激痛が。どちらもすぐに治まったが、過去イチ痛かった。

目が覚めた時、お尻に敷かれていた右腕が動かない。「あー…麻痺したな」右足も動かない。左腕で右腕を引っ張り出したが、衝撃だった。腕が重い。これ、ゾッとする。

そして脳出血の手術

17時からの手術が終わったのが23時頃だったか。再び目が覚めた時、先生に「右手動かして」と言われて私の脳が右手に命令を出すと…動いた!先生も驚いて声を上げた。「うわ!すごいやん!!」右足も動いた。どういう理屈かわからないが、ありがたいことに右半身マヒは免れた。

術後の強烈な症状

目が覚めてからは戦慄の連続だった。物が二重に見える。目に映る物の位置が実際より5㎝ほどずれている。幻覚が見える。言葉が理解できず、出て来ない。手術した病院には2週間ほどいたが、「意識状態や認識が十分でないからいろいろ不安」という理由で私はスマホを取り上げられてしまった。コロナの為お見舞いが全くなく、誰ともつながることができなかった。

失語症

初期の強烈な症状が落ち着いた頃、病室にマルータ12月号が届いた。くすからの差し入れだ。嬉しくて涙が出た。マルータが無事に発行された!安堵と感謝でいっぱいだった。そこでマルータを読もうとしたのだが…。
読めない。20文字ほどの1行すら。単語はわかるが文章の意味を把握できない。目に力を入れ、何度も読もうとする。だめだ、わからん…。この症状は「失語症」。この時は完全にノイローゼだった。
何年も磨き続けた「文章を書く技術」が一瞬で泡と消えてしまった。これから何をして生きていけば良いのだろう?
そしてかがわ総合リハビリテーションセンターに転院。この時は人の話を理解するのが難しかった。言葉も出て来ない。自由になったんで営業の手伝いを始めました。

想像を絶する世界、でも絶対諦められない

入院して最初の頃、言語聴覚士の先生に「動物の名前を言って下さい。例えばネコとか」と言われたが、私は1分間でただの1つも言えなかった。

こんなことを受け入れられる訳がない。絶対にごめんだ。だから寸暇を惜しんでリハビリしまくった。決まった日課以外に毎日宿題を出してもらい、読書練習、日記、個人的な手記など。本気で取り組んだので、入院中テレビは一秒も観なかった。 退院が決まった頃、先生方には今後について相談に乗って頂いた。皆さん口を揃えて「あなたの場合、仕事がリハビリでしょう」と言われた。

そして仕事復帰へ

復帰後、業務内容はかなり配慮してもらっている。難しい話と早口が苦手なので、営業は引退して制作中心へ。取材は必ず誰かの同行、聞きながらメモれないので全部録音だ。最初文章を書くのはかなり苦労した。毎日朝から晩までイライラとの闘いだった。
あの時「ともが脳出血になってから」というコラムを6回連載したのだが、実は読者の方から「コラムを続けて欲しい」というご要望がたくさんあった。私もしたい思いは強かったが、なぜできなかったのか?それは思いの外回復が順調だったからだ。脳卒中で後遺症が残る人は7割以上といわれている。多くの人が泣いているのに、軽い感じで「仕事復帰しました」なんてとても言えなかった。

脳内出血からの高次脳機能障害。それまでの私には知識も危機感もなかった

今回久しぶりにかなりの勇気を出して書き始めたのには理由がある。私が患っている失語症は「高次脳機能障害」のうちの1つなのだが、この厄介な障害に悩む人を支援してくれる画期的な仕組みが出来たからだ。

それを教えてくれたのは、「かがわ高次脳機能障害友の会ぼちぼち」の会長・合田さん。実はけっこうこの障害に悩む人は多いのだ。私も取材をきっかけに入会させてもらった。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、脳が傷ついて起こる後天性の障害だ。高次脳機能障害の主な症状は、忘れる・覚えられない「記憶障害」、気が散る・ミスが多い「注意障害」、段取りできない・指示が必要「遂行機能障害」、突然怒る・我慢できない「社会的行動障害」など。この障害の特徴は「目に見えない」こと。麻痺がなければパッと見健常者だから理解されない。詳しい説明はわかりやすい動画を見つけたのでこちらに委ねたい。

【目に見えない障害】高次脳機能障害の症状と苦悩《メディバリー大学病院/医師監修》

かがわ高次脳機能障害支援センターについて

施設に入ると、新たに開設した相談窓口が正面に目に入る。やはりいきなり病院で診察よりも、専門家に相談できるところがいい。元々相談窓口は以前からあったのだが、今回仕組みが少し変わった。何より助かるのは「専属コーディネーター」がいることだ。診察、リハビリ、手帳、年金の手続きまで同じ人に相談できる。これをきっかけに高次脳機能障害と診断されれば、必要なリハビリや就労支援を受けられる上、手帳・年金による経済的支援を得るきっかけにもなる。ぜひぜひ積極的に連絡してみてほしい。

かがわ高次脳機能障害支援センター

頑張り屋さん、要注意。私が倒れたのは何故なのか

そもそも私が45歳で脳出血になったのは、ストレスから来る高血圧が原因だった。主治医にも「仕事やりすぎや。こんなこと普通ないで?」と言われた。当時の私は毎月の校正時期、脳内で戦いのドラムを鳴らしていた。完全なワーカホリック(仕事中毒)だ。自らストレス値を爆上げしていたのだ。
今思えば何年も前からサインが出ていた。家事は超だるく、体重も増え続け、気がつけば創刊から10㎏増。さらに不眠。頑張った分マルータは元気だが、その対価が脳出血と高次脳機能障害だった。
あれ以来、私には「強いストレスは人を殺す」の認識が刷り込まれている。今はストレス値が上がってきたらわかる。オン・オフの切り替えができる。家事は苦痛ではないし、ダイエットも成功して10㎏痩せた。やはり人間には「余裕」がいる。
大人はみんな忙しいのでストレスが強いのは仕方がない。まして子育て中は自分だけのリラックスタイムを作るこことだって難しい。だからストレス値を下げるには自分なりの工夫がいると思う。でも、優先順位を上げる努力をした方がいい。本当に誰にもこんな目に遭って欲しくはない。
周囲に気になる人がいたらぜひ「今月のマルータ読んでみ」と声をかけて欲しい。読者の皆さん、くれぐれも、お体を大事に。誰にも諦めて欲しくない。、

月刊マルータ制作統括 とも