2021.02.17
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半世紀を超えて愛される丸亀の味 大西食品のしょうゆ豆【再掲】
県内ほとんどのスーパーで手に入れることのできる「大西食品のしょうゆ豆」。ご飯やお酒のお供に、うどんの箸休めに、50年以上も親しまれてきた香川県人のソウルフード。その歴史とその魅力をクローズアップします。
ほとんどの地元民が知っているあの味
しょうゆ豆は今も昔も香川県の郷土料理として、日々の食卓や農家行事、集落の集まりになくてはならない存在です。
50年以上昔は、米の裏作として豊富に取れるそら豆を使い、家庭で作られていたものですが、今では県内の各スーパーで手に入る「大西食品のしょうゆ豆」がうちの味、という家庭も多いでしょう。
2代目社長 細谷誠氏。土器町北にある本社工場にて
風袋町にある販売所には、ピリ辛味や化学調味料無添加、食べきりパック、その他の煮豆類など大西食品の商品がすべて揃っている
煮豆からの転向、看板商品誕生
大西食品は土器町北に本社工場を構える老舗のしょうゆ豆メーカーです。株式会社設立は昭和34年、創業は明治時代で当初は丸亀の陸軍に生活品を卸していたそうです。
大西食品がしょうゆ豆を手掛けはじめたのは、設立間もない昭和30年代後半、時代は高度経済成長期。手間のかかるしょうゆ豆が手軽に買えたら忙しい母親たちに喜んでもらえるのではないだろうか?そう考えた創業者の大西圭太郎氏がそれまでの看板商品だった煮豆からの転向を決めました。
創業者の大西圭太郎氏。昭和40年頃、当時の工場にて(現在の販売所付近)
会社設立当時の社用トラック。電話番号の3桁に昭和40年代が偲ばれる
徹底したこだわり
大西氏は商売人というよりも研究者気質で、とことん納得のいくしょうゆ豆を追求しました。煮豆とは違う独特の固めの食感を残し、なおかつ皮は柔らかく。そのこだわりは家族が「お父さん研究ばかりで売る気はあるん?」と呆れるほどだったといいます。
開発の時、味と共にこだわったのが衛生管理と品質管理です。「人の口に入るものだから」と十分に日持ちさせるため、何度も試行錯誤を重ねて業界初の真空パックを導入、そこで初めて商品化に踏み切ったのです。
狙いは当たりました。家庭ではなかなか出せない味と食感が人気を呼び、大西食品のしょうゆ豆は多くの人に愛される「郷土の味」としてあっという間に定着しました。
当時から県外に住む香川県人からも「送ってほしい」という要望が多く、昭和50年頃から通販事業は自然発生的に始まったといいます。当時はまだ宅配便などなく、丸亀駅から各地の駅へ、依頼主には到着駅まで取りに行ってもらうというやり方でした。
今では毎日のように全国に向け商品を発送、業界シェア約65%の最大手企業として、大西食品のしょうゆ豆は不動の人気を誇っています。
味以上のこだわりと老舗企業のプライド
大西食品がいちばん誇りにしているのが衛生管理です。 2020年、日本ではすべての食品製造業者にHACCPという食品衛生の管理方法が義務化されますが、同社では早々とこの認定を済ませています。かなりコストと手間のかかる大規模管理ですが、2代目社長の細谷誠さんは「どの手法も昔からやっていたことだから」と、笑顔で答えてくれます。先代の衛生に関する強いこだわりが今も見事に引き継がれています。
そしてもうひとつ、細谷社長が心を砕いているのが「価格」です。
「価格の維持に関しては実はいちばん苦労している部分です。普段の食卓にのぼる郷土料理なのでもともと高い値段で売るつもりはありませんが・・」と苦悩をにじませます。
材料や人件費、輸送費の高騰、消費税増税、衛生管理の徹底と、食品製造業界をとりまく環境は厳しく、大西食品も例外ではありません。いつもスーパーで手軽に手に入る価格を維持するには大変な企業努力が必要のようです。
いつも同じ味にするために
誕生以来ずっと変わらない味。その品質の維持はどのように行われているのかを細谷社長に伺いました。
「いちばん難しいのは“炒り”の工程で、機械化が進んでもそこは職人の感覚です。水分量で固さが変わりますからね。実は今うちで使っているそら豆はチベットから無農薬栽培のものを現地で半年間乾燥させてから輸入しています。輸入自体は1年に1回ですが、一旦神戸の業者に送って厳密に選別し、ひと月で使う量を12回に分けて送ってきます。だから12か月目に届いたそら豆がなくなる頃、次からは新豆が届くんです。
チベットのそら豆畑にて現地視察の様子。チベットは高地で虫がいないため農薬は不要
チベットは世界でも品質の良いそら豆の産地で知られるが、中国の一部となるため、原材料表記も中国となってしまう
ある日突然1年も新しい豆で作り始めるということです。豆の水分量が急に変わるものですから、かなり気を遣います。普段は2人程度で炒る時間を見計らっていますが、この時だけは5人がかりですよ。ありがたいことですが、うちのしょうゆ豆にはコアなファンがついているので、ちょっと固さが変わるとすぐに電話がかかってきます。『今日のは固い』とか『やわらかくなった』とか。まぁ、私たちはそれを言わせないぞ、という気持ちでやっていますけど、さすがに毎日のように召し上がって頂いている方は手強いです(笑)。」
いくら機械化しても最後は人の目、人の手。いつも同じ味を出せるところに職人の矜持が感じられます。
噛んだ時にホロリと崩れるあの食感、甘辛の味付け。あとに残るそら豆の旨み。ハレの日にも、ケの日(日常)にも、昔から大切に守られてきたこの郷土の味が、これからもずっと子や孫に受け継がれていくことを願うばかりです。
お問い合わせはこちら
通販・商品情報は大西食品ホームページへ
https://www.onisi.co.jp/
大西食品風袋町販売所
丸亀市風袋町178番地
0877-22-7385
休:日・祝
営業時間:9:00〜17:00
この記事を書いた人
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月刊マルータ発行人。未年、動物占い「頼られると嬉しいひつじ」。だが実際は頼りない。
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50年以上昔は、米の裏作として豊富に取れるそら豆を使い、家庭で作られていたものですが、今では県内の各スーパーで手に入る「大西食品のしょうゆ豆」がうちの味、という家庭も多いでしょう。
2代目社長 細谷誠氏。土器町北にある本社工場にて
風袋町にある販売所には、ピリ辛味や化学調味料無添加、食べきりパック、その他の煮豆類など大西食品の商品がすべて揃っている
煮豆からの転向、看板商品誕生
大西食品は土器町北に本社工場を構える老舗のしょうゆ豆メーカーです。株式会社設立は昭和34年、創業は明治時代で当初は丸亀の陸軍に生活品を卸していたそうです。
大西食品がしょうゆ豆を手掛けはじめたのは、設立間もない昭和30年代後半、時代は高度経済成長期。手間のかかるしょうゆ豆が手軽に買えたら忙しい母親たちに喜んでもらえるのではないだろうか?そう考えた創業者の大西圭太郎氏がそれまでの看板商品だった煮豆からの転向を決めました。
創業者の大西圭太郎氏。昭和40年頃、当時の工場にて(現在の販売所付近)
会社設立当時の社用トラック。電話番号の3桁に昭和40年代が偲ばれる
徹底したこだわり
大西氏は商売人というよりも研究者気質で、とことん納得のいくしょうゆ豆を追求しました。煮豆とは違う独特の固めの食感を残し、なおかつ皮は柔らかく。そのこだわりは家族が「お父さん研究ばかりで売る気はあるん?」と呆れるほどだったといいます。
開発の時、味と共にこだわったのが衛生管理と品質管理です。「人の口に入るものだから」と十分に日持ちさせるため、何度も試行錯誤を重ねて業界初の真空パックを導入、そこで初めて商品化に踏み切ったのです。
狙いは当たりました。家庭ではなかなか出せない味と食感が人気を呼び、大西食品のしょうゆ豆は多くの人に愛される「郷土の味」としてあっという間に定着しました。
当時から県外に住む香川県人からも「送ってほしい」という要望が多く、昭和50年頃から通販事業は自然発生的に始まったといいます。当時はまだ宅配便などなく、丸亀駅から各地の駅へ、依頼主には到着駅まで取りに行ってもらうというやり方でした。
今では毎日のように全国に向け商品を発送、業界シェア約65%の最大手企業として、大西食品のしょうゆ豆は不動の人気を誇っています。
味以上のこだわりと老舗企業のプライド
大西食品がいちばん誇りにしているのが衛生管理です。 2020年、日本ではすべての食品製造業者にHACCPという食品衛生の管理方法が義務化されますが、同社では早々とこの認定を済ませています。かなりコストと手間のかかる大規模管理ですが、2代目社長の細谷誠さんは「どの手法も昔からやっていたことだから」と、笑顔で答えてくれます。先代の衛生に関する強いこだわりが今も見事に引き継がれています。
そしてもうひとつ、細谷社長が心を砕いているのが「価格」です。
「価格の維持に関しては実はいちばん苦労している部分です。普段の食卓にのぼる郷土料理なのでもともと高い値段で売るつもりはありませんが・・」と苦悩をにじませます。
材料や人件費、輸送費の高騰、消費税増税、衛生管理の徹底と、食品製造業界をとりまく環境は厳しく、大西食品も例外ではありません。いつもスーパーで手軽に手に入る価格を維持するには大変な企業努力が必要のようです。
いつも同じ味にするために
誕生以来ずっと変わらない味。その品質の維持はどのように行われているのかを細谷社長に伺いました。
「いちばん難しいのは“炒り”の工程で、機械化が進んでもそこは職人の感覚です。水分量で固さが変わりますからね。実は今うちで使っているそら豆はチベットから無農薬栽培のものを現地で半年間乾燥させてから輸入しています。輸入自体は1年に1回ですが、一旦神戸の業者に送って厳密に選別し、ひと月で使う量を12回に分けて送ってきます。だから12か月目に届いたそら豆がなくなる頃、次からは新豆が届くんです。
チベットのそら豆畑にて現地視察の様子。チベットは高地で虫がいないため農薬は不要
チベットは世界でも品質の良いそら豆の産地で知られるが、中国の一部となるため、原材料表記も中国となってしまう
ある日突然1年も新しい豆で作り始めるということです。豆の水分量が急に変わるものですから、かなり気を遣います。普段は2人程度で炒る時間を見計らっていますが、この時だけは5人がかりですよ。ありがたいことですが、うちのしょうゆ豆にはコアなファンがついているので、ちょっと固さが変わるとすぐに電話がかかってきます。『今日のは固い』とか『やわらかくなった』とか。まぁ、私たちはそれを言わせないぞ、という気持ちでやっていますけど、さすがに毎日のように召し上がって頂いている方は手強いです(笑)。」
いくら機械化しても最後は人の目、人の手。いつも同じ味を出せるところに職人の矜持が感じられます。
噛んだ時にホロリと崩れるあの食感、甘辛の味付け。あとに残るそら豆の旨み。ハレの日にも、ケの日(日常)にも、昔から大切に守られてきたこの郷土の味が、これからもずっと子や孫に受け継がれていくことを願うばかりです。
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大西食品風袋町販売所
丸亀市風袋町178番地
0877-22-7385
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