2021.02.08
コラム
世界に誇るMade in 丸亀 今治造船がスゴイ【再掲】
月刊マルータ、過去の巻頭特集から好評だったものを再度掲載するシリーズです。
丸亀市のランドマーク 今治造船のクレーン
丸亀市のいたるところから見えるオレンジと白の巨大な門。今やお城、飯野山と並んで目立つランドマークになっているのが今治造船のクレーンです。そしてそこは、世界最大級の貨物船が生まれる「ゆりかご」だったのです。
3基のクレーンがそびえる工場は、昭和町にある「今治造船丸亀事業本部」です。創業は1971(昭和46)年。本社は今治ですが、現在はこの丸亀事業所本部が主力を担っています。
高さ90mのゴライアスクレーン
この「門」の形をしたクレーンは、旧約聖書に登場する巨兵「ゴリアテ」から「ゴライアスクレーン」と名付けられています。高さは90m、およそ30階建てのビルに相当し、吊下げ可能な重量はなんと1330t。その頂上からは瀬戸大橋、飯野山から本島、広島、さらには瀬戸内海の対岸まで360度見渡せます。
ゴライアスクレーンの上。瀬戸内海が一望できる
超大型ドックを備える丸亀事業本部
工場の敷地面積は75万㎡。図のとおり、宇多津町の浜街道から北の部分がほぼすっぽりと入る広さ。ここで約2500人の従業員(取材当時)が働いています。
工場の中に、イオンタウン宇多津、ゴールドタワーなど浜街道から北側がすっぽり入る面積
最近は、現場で働きたい!という女性が増えているそうで、20~30代の女性が4人、現場監督として活躍中(取材当時)。中には、「設計図の上だけでなく、実際に大きな鉄板を自分で曲げたい!」と申し出た女性もいるそうです。
ジブクレーン。これで300t吊れる
丸亀事業本部には、2017年秋に超大型ドックが完成しました。長さ610m、幅80m、深さ11.7mのこの第3号ドックは、全長400mという世界最大級の2万個積みコンテナ船が造れる大きさ。しかも、流れ作業的に常に1.5隻を造っている状態で、次々と巨大船を造り出せるのです。
全長400mというと、ゆめタウン丸亀をはるかに凌駕する大きさ。そんな大きな船に積むエンジンも想像以上で、重量2000t、エンジンだけで小さなマンション1棟分くらいの大きさがあるそうです。
ゆめタウン丸亀の建物をはるかに凌ぐ大きさのコンテナ船
何より驚くのが、この世界最大級の2万個積みコンテナ船、乗組員はたった30人程なんだそうです。最新鋭の大型船は自動化や電子化が進み、人手がなくても船を安全に走らせることができるからです。
この大きさ!丸囲みの中に溶接作業員
この船のスクリューの直径は約10m。スケールがとにかく大きい
経験がものをいう熟練の技
造船のオートメーション化が進む中でも、どうしても人の手でしかできない工程があります。それが、美しい船首の曲線部分などです。最大80㎜もの分厚い鉄板を、バーナーで均一に熱して曲げていく――これは日本特有の技術。海外では機械でプレスして曲げることが多いのですが、人の手だとより確実に美しく曲がります。丸亀の工場でも、完全に1人で最初から最後までこの作業ができる人は2、3人しかいないのだとか。経験がものをいう熟練の技ですね。現在、後続を育成中とのことです(取材当時)。
巨大な鉄板をコンピュータで自動切断。しかし繊細な曲げ加工は人の手で。熱して、水で冷やして、の繰り返しで木製の治具にぴたりと曲線を合わせていく
そしてもうひとつ注目したいのが、丸亀事業本部に「船型開発センター」が完成したこと。これは2つの水槽がある実験施設で、模型の船(6~8m)を使ってさまざまなデータを取ることができます。
「船型開発センター」の完成で、実験から設計、製造まで一貫してスピーディにできるようになります。実際、丸亀事業本部には設計技術者が360人もいて(取材当時)、ここで開発された日本初の技術を搭載した船もあるそうです。
世界を動かす造船業の魅力
今日、この工場で生み出されている超大型のコンテナ船は、これから地球上のあらゆる海を縦横に行き来します。食品、衣料、家電、日用品など私たちの周りにある外国製品のほとんどがこういったコンテナに載って世界中を流通しています。「船よりたくさん荷物を積めるものはありません」と、常務取締役・丸亀工場長(取材当時)の和田晋也さん。「世の中で一番大きなものが造れるというのが造船業の魅力です」。
今治造船丸亀事業所で生み出されたメガコンテナ船、まさにMADEin丸亀が世界を動かしている――。これは、間違いなく地元の大きな誇りです。
注)月刊マルータ2018年10月号巻頭特集を再掲しました。記載の数値や人物の肩書きなど現在と異なる場合があることをご了承ください。
この記事を書いた人
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月刊マルータ発行人。未年、動物占い「頼られると嬉しいひつじ」。だが実際は頼りない。
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3基のクレーンがそびえる工場は、昭和町にある「今治造船丸亀事業本部」です。創業は1971(昭和46)年。本社は今治ですが、現在はこの丸亀事業所本部が主力を担っています。
高さ90mのゴライアスクレーン
この「門」の形をしたクレーンは、旧約聖書に登場する巨兵「ゴリアテ」から「ゴライアスクレーン」と名付けられています。高さは90m、およそ30階建てのビルに相当し、吊下げ可能な重量はなんと1330t。その頂上からは瀬戸大橋、飯野山から本島、広島、さらには瀬戸内海の対岸まで360度見渡せます。
ゴライアスクレーンの上。瀬戸内海が一望できる
超大型ドックを備える丸亀事業本部
工場の敷地面積は75万㎡。図のとおり、宇多津町の浜街道から北の部分がほぼすっぽりと入る広さ。ここで約2500人の従業員(取材当時)が働いています。
工場の中に、イオンタウン宇多津、ゴールドタワーなど浜街道から北側がすっぽり入る面積
最近は、現場で働きたい!という女性が増えているそうで、20~30代の女性が4人、現場監督として活躍中(取材当時)。中には、「設計図の上だけでなく、実際に大きな鉄板を自分で曲げたい!」と申し出た女性もいるそうです。
ジブクレーン。これで300t吊れる
丸亀事業本部には、2017年秋に超大型ドックが完成しました。長さ610m、幅80m、深さ11.7mのこの第3号ドックは、全長400mという世界最大級の2万個積みコンテナ船が造れる大きさ。しかも、流れ作業的に常に1.5隻を造っている状態で、次々と巨大船を造り出せるのです。
全長400mというと、ゆめタウン丸亀をはるかに凌駕する大きさ。そんな大きな船に積むエンジンも想像以上で、重量2000t、エンジンだけで小さなマンション1棟分くらいの大きさがあるそうです。
ゆめタウン丸亀の建物をはるかに凌ぐ大きさのコンテナ船
何より驚くのが、この世界最大級の2万個積みコンテナ船、乗組員はたった30人程なんだそうです。最新鋭の大型船は自動化や電子化が進み、人手がなくても船を安全に走らせることができるからです。
この大きさ!丸囲みの中に溶接作業員
この船のスクリューの直径は約10m。スケールがとにかく大きい
経験がものをいう熟練の技
造船のオートメーション化が進む中でも、どうしても人の手でしかできない工程があります。それが、美しい船首の曲線部分などです。最大80㎜もの分厚い鉄板を、バーナーで均一に熱して曲げていく――これは日本特有の技術。海外では機械でプレスして曲げることが多いのですが、人の手だとより確実に美しく曲がります。丸亀の工場でも、完全に1人で最初から最後までこの作業ができる人は2、3人しかいないのだとか。経験がものをいう熟練の技ですね。現在、後続を育成中とのことです(取材当時)。
巨大な鉄板をコンピュータで自動切断。しかし繊細な曲げ加工は人の手で。熱して、水で冷やして、の繰り返しで木製の治具にぴたりと曲線を合わせていく
そしてもうひとつ注目したいのが、丸亀事業本部に「船型開発センター」が完成したこと。これは2つの水槽がある実験施設で、模型の船(6~8m)を使ってさまざまなデータを取ることができます。
「船型開発センター」の完成で、実験から設計、製造まで一貫してスピーディにできるようになります。実際、丸亀事業本部には設計技術者が360人もいて(取材当時)、ここで開発された日本初の技術を搭載した船もあるそうです。
世界を動かす造船業の魅力
今日、この工場で生み出されている超大型のコンテナ船は、これから地球上のあらゆる海を縦横に行き来します。食品、衣料、家電、日用品など私たちの周りにある外国製品のほとんどがこういったコンテナに載って世界中を流通しています。「船よりたくさん荷物を積めるものはありません」と、常務取締役・丸亀工場長(取材当時)の和田晋也さん。「世の中で一番大きなものが造れるというのが造船業の魅力です」。
今治造船丸亀事業所で生み出されたメガコンテナ船、まさにMADEin丸亀が世界を動かしている――。これは、間違いなく地元の大きな誇りです。
注)月刊マルータ2018年10月号巻頭特集を再掲しました。記載の数値や人物の肩書きなど現在と異なる場合があることをご了承ください。
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