2025.10.10
コラム
中津万象園賛助会員が語る「中津万象園のここが凄い、こう使いたい」
第7回 (公社)香川県観光協会 佐藤今日子さん

――今回は、公益社団法人香川県観光協会の佐藤今日子専務理事にお話を伺います。
香川県をはじめ全国各地の観光地事情に明るい佐藤さんから見た「中津万象園」とは?
佐藤 中西讃を訪れる観光客の皆さんにお勧めしやすい観光地、ですね。京極家の大名庭園として、丸亀市指定の文化財というお墨付きもありますし、いつも手入れが行き届いていて静かで美しい、加えて無料の広い駐車場があって、ランチをいただける「懐風亭」があるのは大きいです。万象園での昼食を軸に観光プランを組みやすいですし。歴史やアートに興味を持って香川県を訪れる皆様には是非足を運んでいただきたく、県観光協会でも、こんぴらさんをお詣りする中讃観光のモデルコースに組み込んでいます。
――ありがとうございます。栗林公園との大名庭園コラボ企画の際も、佐藤さんにはお力添えいただき、本当に感謝しております。
佐藤 大名庭園巡りというのは、これまでに無い面白い企画だったと思います。ただ、1日に大名庭園だけを2つ巡る人は、どうしても「歴史好き」とか「庭園好き」の方に限られてしまいますので、日帰りの方や滞在が1日だけの方にはお勧めしづらいジレンマがありました。泊りがけで来ていただける方にはもってこいの観光地なのですが、香川で宿泊されない県外観光客の方も多いので、県観光協会としても「香川で1~2泊してもらおう」という滞在型観光の推進を柱の一つにしています。県内でゆっくりされる観光客が増えると、もっと万象園を巻き込んでいけると思います。
――私も、旅行系インフルエンサーたちが発信する「1日で香川を遊び尽くす」系のYouTube動画を観たりしますが、まぁことごとく万象園がスルーされていて悲しくなります。ですが確かに仰る通り、「朝栗林公園に行って昼から万象園に行こう」とはならないですよね。1泊したとしても、大名庭園2つはむつごい気がします。観光のプロの目線から、何かご提案はありますか?
佐藤 現存日本最古の煎茶席「観潮楼」がある、という付加価値を活かしたいですね。煎茶道体験などができるといいのですが、煎茶道人口の少なさと、観潮楼自体普段公開されていないのがネックでしょうか。ですが、煎茶文化自体は日本人の生活に溶け込んだ堅苦しくないものですし、観潮楼も公開できるのであれば日常的に公開して広報すれば、十分売りになる存在だと思います。

――母屋での抹茶体験はやっているのですが、折角日本最古の煎茶席があるのに活用しない手はないですね。実は市観光協会とのコラボで「京極煎茶」をブランド化して売っていた時期もあるのですが……。
佐藤 そういった丸亀市とのコラボは積極的にやった方がいいと思います。行政と民間のコラボは、県内の他地域でも活性化していますし、ましてや丸亀城と中津万象園は京極家のお屋敷と別邸なのですから、セットでアピールした方が訴求力が高まります。
――そう思って、丸亀城の天守と万象園のセット割引券の販売を、この8月から始めたところです。
佐藤 素敵ですね!そのような取り組みを単発で終わらせるのではなく、二の矢三の矢を放っていくことで、より多くの人に届くのではないかと思います。あまりお金がかからない取り組みであれば、継続されることが大事だと思います。既存のコラボ企画である城泊などにも、いい影響が及んでくると思いますよ。市の施設である丸亀うちわミュージアムも万象園に併設する形でオープンしましたが、そちらとの相乗効果は?
――おかげさまで入園者数増加には繋がりましたが、現状は期待した程では無かったというのが正直なところでしょうか。
佐藤 民間企業として運営されている以上は利益を出さなければいけませんので、行政と方向性をすり合わせるのは難しい面もありますが、一緒に丸亀の観光を盛り上げていこうという情熱を持って知恵を出し合えば、きっと面白いことができるはず。煎茶もそうですが、新しいことに手を出さなくても、既存の武器で十分戦えると私は思います。
――そうお考えになる理由は何でしょう?
佐藤 私はカミーユ・コローの絵が大好きなのですが、大学生の頃に万象園の美術館にコローの絵があることを知り、友達と一緒に観に来たのが、万象園の魅力に気づいたきっかけです。コローだけじゃなくて、バルビゾン派の大家の作品がいっぱいあって、「こんな近くで観れたんだ!」と感激したのを覚えています。しかもお食事もできて、綺麗な日本庭園も散策できるんですよ? 最高じゃないですか(笑)。もちろん万象園の存在はそれまでに知ってはいたのですが、「気軽に生で本物のコローが観られる場所」として私の中に強くインプットされました。つまり、魅力に気づいていない潜在的なファン層に対して、きっかけ作りとPRをすることによって、結果につながると思うのです。
――万象園を訪れるきっかけは千差万別、人それぞれなのだとあらためて実感しました。コローはお人好しで、それがゆえに贋作が多い画家としても有名という逸話をつい最近有名インフルエンサーが発信していましたが、そういうネタに乗っかっていくことも大事ですね。
最後に、佐藤さんのこれからの万象園に対する思いをお聞かせいただけますか?
佐藤 私が初めて県の観光振興課に配属になったのが1990年頃なんですが、それから直島にベネッセさんの最初のミュージアムができて、最初の何年かはお客さんも少なくて、「同じ民間で頑張ってらっしゃる万象園さんみたいになってほしい」と思っていたんです。その後、あちらは徐々にアートの聖地とまで言われるようになりましたが、逆に今は万象園さんが苦戦されています。美術館も特別展のみの開催になってしまいましたね。丸亀にも宿泊して本島などにも行くような魅力的な滞在プランができれば、駐車場と食事処を兼ね備えた万象園には、その中核を担うポテンシャルがあると思います。
私がお手伝いできるのはPR面くらいしかないかもしれませんが、万象園に県内外からのお客様が集うことを願って、これからも応援していきます!
第7回 (公社)香川県観光協会 佐藤今日子さん

――今回は、公益社団法人香川県観光協会の佐藤今日子専務理事にお話を伺います。 香川県をはじめ全国各地の観光地事情に明るい佐藤さんから見た「中津万象園」とは?
佐藤 中西讃を訪れる観光客の皆さんにお勧めしやすい観光地、ですね。京極家の大名庭園として、丸亀市指定の文化財というお墨付きもありますし、いつも手入れが行き届いていて静かで美しい、加えて無料の広い駐車場があって、ランチをいただける「懐風亭」があるのは大きいです。万象園での昼食を軸に観光プランを組みやすいですし。歴史やアートに興味を持って香川県を訪れる皆様には是非足を運んでいただきたく、県観光協会でも、こんぴらさんをお詣りする中讃観光のモデルコースに組み込んでいます。
――ありがとうございます。栗林公園との大名庭園コラボ企画の際も、佐藤さんにはお力添えいただき、本当に感謝しております。
佐藤 大名庭園巡りというのは、これまでに無い面白い企画だったと思います。ただ、1日に大名庭園だけを2つ巡る人は、どうしても「歴史好き」とか「庭園好き」の方に限られてしまいますので、日帰りの方や滞在が1日だけの方にはお勧めしづらいジレンマがありました。泊りがけで来ていただける方にはもってこいの観光地なのですが、香川で宿泊されない県外観光客の方も多いので、県観光協会としても「香川で1~2泊してもらおう」という滞在型観光の推進を柱の一つにしています。県内でゆっくりされる観光客が増えると、もっと万象園を巻き込んでいけると思います。
――私も、旅行系インフルエンサーたちが発信する「1日で香川を遊び尽くす」系のYouTube動画を観たりしますが、まぁことごとく万象園がスルーされていて悲しくなります。ですが確かに仰る通り、「朝栗林公園に行って昼から万象園に行こう」とはならないですよね。1泊したとしても、大名庭園2つはむつごい気がします。観光のプロの目線から、何かご提案はありますか?
佐藤 現存日本最古の煎茶席「観潮楼」がある、という付加価値を活かしたいですね。煎茶道体験などができるといいのですが、煎茶道人口の少なさと、観潮楼自体普段公開されていないのがネックでしょうか。ですが、煎茶文化自体は日本人の生活に溶け込んだ堅苦しくないものですし、観潮楼も公開できるのであれば日常的に公開して広報すれば、十分売りになる存在だと思います。

――母屋での抹茶体験はやっているのですが、折角日本最古の煎茶席があるのに活用しない手はないですね。実は市観光協会とのコラボで「京極煎茶」をブランド化して売っていた時期もあるのですが……。
佐藤 そういった丸亀市とのコラボは積極的にやった方がいいと思います。行政と民間のコラボは、県内の他地域でも活性化していますし、ましてや丸亀城と中津万象園は京極家のお屋敷と別邸なのですから、セットでアピールした方が訴求力が高まります。
――そう思って、丸亀城の天守と万象園のセット割引券の販売を、この8月から始めたところです。
佐藤 素敵ですね!そのような取り組みを単発で終わらせるのではなく、二の矢三の矢を放っていくことで、より多くの人に届くのではないかと思います。あまりお金がかからない取り組みであれば、継続されることが大事だと思います。既存のコラボ企画である城泊などにも、いい影響が及んでくると思いますよ。市の施設である丸亀うちわミュージアムも万象園に併設する形でオープンしましたが、そちらとの相乗効果は?
――おかげさまで入園者数増加には繋がりましたが、現状は期待した程では無かったというのが正直なところでしょうか。
佐藤 民間企業として運営されている以上は利益を出さなければいけませんので、行政と方向性をすり合わせるのは難しい面もありますが、一緒に丸亀の観光を盛り上げていこうという情熱を持って知恵を出し合えば、きっと面白いことができるはず。煎茶もそうですが、新しいことに手を出さなくても、既存の武器で十分戦えると私は思います。
――そうお考えになる理由は何でしょう?
佐藤 私はカミーユ・コローの絵が大好きなのですが、大学生の頃に万象園の美術館にコローの絵があることを知り、友達と一緒に観に来たのが、万象園の魅力に気づいたきっかけです。コローだけじゃなくて、バルビゾン派の大家の作品がいっぱいあって、「こんな近くで観れたんだ!」と感激したのを覚えています。しかもお食事もできて、綺麗な日本庭園も散策できるんですよ? 最高じゃないですか(笑)。もちろん万象園の存在はそれまでに知ってはいたのですが、「気軽に生で本物のコローが観られる場所」として私の中に強くインプットされました。つまり、魅力に気づいていない潜在的なファン層に対して、きっかけ作りとPRをすることによって、結果につながると思うのです。
――万象園を訪れるきっかけは千差万別、人それぞれなのだとあらためて実感しました。コローはお人好しで、それがゆえに贋作が多い画家としても有名という逸話をつい最近有名インフルエンサーが発信していましたが、そういうネタに乗っかっていくことも大事ですね。 最後に、佐藤さんのこれからの万象園に対する思いをお聞かせいただけますか?
佐藤 私が初めて県の観光振興課に配属になったのが1990年頃なんですが、それから直島にベネッセさんの最初のミュージアムができて、最初の何年かはお客さんも少なくて、「同じ民間で頑張ってらっしゃる万象園さんみたいになってほしい」と思っていたんです。その後、あちらは徐々にアートの聖地とまで言われるようになりましたが、逆に今は万象園さんが苦戦されています。美術館も特別展のみの開催になってしまいましたね。丸亀にも宿泊して本島などにも行くような魅力的な滞在プランができれば、駐車場と食事処を兼ね備えた万象園には、その中核を担うポテンシャルがあると思います。
私がお手伝いできるのはPR面くらいしかないかもしれませんが、万象園に県内外からのお客様が集うことを願って、これからも応援していきます!

